田中章滋個展



「鏡は、その形や用途がいかなるものであっても、 つねに現実と錯視とが出会い混淆するひとつの奇蹟である。」
         ユルジス・バルトルシャイティス『鏡』


                                                                    

 田中章滋                                                                     岡 淳 一

 あなたの幻想で私をだましつづけよ。作品世界とは畢竟、幻想ではなかったか。あなたは幻想を送り続け、私はそこから 刺激を受けて、新たな幻想をいだきつづける。その関係の中でしか作品は受容されない。「阿呆舟(ナーレンシフ)」の船 頭たるあなたに乗せられ、私たちは原初の闇に送り返される。意味と象徴と世界がなければ、単なる還元された「学」や 「術」で終ってしまう。「学」や「術」を越えた強烈な情熱が、あなたにはある。 だが、あなたは早晩、解体するであろう。

 しかしこの崩壊過程は、ひとりの芸術家の問題ではなく、私たち全員の自画像でもあるのだ。意識的であろうとなかろうと、 フーコーが自らが住む知の根拠を爆破したように、あなたもまた、自らの持てる知のすべてを放棄するしかない表現の現場 の中で、作品に向き合わざるをえない。その虚空の上に打ち立てられた巨大な幻想の楼閣たち。さらばだ。あなたとともに 粉砕されよ。しかし粉々になったそのカケラの輝きの中にこそ真理は宿っているのだ。難破した私たちを取り巻く闇はます ますもって深いが、かすかに輝くカケラの光が私たちの希望でもある。エンデの『モモ』に出てくる亀のカシオペイアは、 より本質に近づくために、ますますゆっくりと歩む。そして、あなたは世の中が早く動けば動くほど、それに振りまわされ ることなく、静かに亀のごとくに歩みを続ければよいのだ。 あなたに世間の問題についての現実的な解決策や慰しを求めは しない。あなたは徹底的に破壊的な作品を目指しているはずだから。

 「おまえは何者だ、お前について私に語れ」と迫る優越的観衆に対して、「作品を見よ」とだけ提示して解説を拒否する きだ。言葉による語りを排し、視覚による表現にすべてを語らせるのがビジュアル作家の宿命なのだから。



【作品リスト】
1. クロリンダ
2. スペクトラムな誘惑
3. ルミエール
4. アリス
5. アシール
6. ロートレアモンの私   
7. 虚構の鏡
8.
石の女
9. アルマジーヌ
10. 彼女は夏の間中踊った
11. 土星の徴
12. イシス
13. 麒麟の夢
14. ダブル
15. ヒュプノスと共に
16. 新ゲルマーニア
17. じゃじゃ馬馴らし
18. 調教師    
19. バニラの島
20. 蜜蜂の庭
21. 夜の散歩
22. ルミエールの為のエスキース


35.5×21.3cm
18.0×14.0cm
66.7×39.8cm
35.5×21.3cm
35.5×21.3cm
62.3×38.0cm
45.3×37.8cm
27.0×27.0cm
27.0×27.0cm
22.3×15.8cm
27.5×22.4cm
25.5×24.4cm
25.0×25.0cm
26.8×19.6cm
36.0×90.0cm
36.0×90.0cm
21.5×29.5cm
23.3×14.0cm
14.8×14.8cm
12.3×15.3cm
30.0×20.0cm
35.5×21.3cm



5/19日(月)〜5/31日(土)
10:30〜18:30会期中無休
(日曜・最終日12:00〜18:00)

〒104東京都中央区銀座3-5-16 島田ビル2F
TEL.03-3535-6858 青木画廊

AOKI GALLARY 3-5-16 Ginza Cyuo-ku,Tokyo